仏教入門

はてなブックマークで「「人は何を考えているときが一番幸せか?」 脳波スキャンで解明される : earth in us.」という記事の人気があったので見てみると、Googleの研究者チャディー・メン・タンという人が紹介されていた。どこかで見たことがあるなあ、と思っていたら最後にリンクされていた TED の動画を見てビックリ、2007年に開催されていた Google Teck Talk にフランス人僧侶のマチウ・リカール氏を招いていた人物だった。

僕が初めて読んだマチウ・リカール氏の本はこのブログの中でもたまに引用するんだけど、「僧侶と哲学者―チベット仏教をめぐる対話」で、サッカーのW杯へ二度目の観戦に行くかどうかを決めかねていて矢先、ネットニュースでフランス人とやり取りをしている中で教えてもらったものだった。(日本が初めてW杯に出場しフランスにやってくるということもあって仏教を含めた日本ブームが起きていたらしい)子供が産まれる直前にも不安を掻き消すように再読していたこともあり、懐かしさも込めて仏教理解に役に立った本を数冊紹介することにする。因にここで言う「仏教」とは、劣化複製され部分的に派生した日本にある多くのモノと違い、言い出しっぺ本人が何を考えていたのかを理解する原典、いわゆる「原始仏教」について話しています。(プログラマであれば「学ぶ時には『原典』に当たる」という格言は有名ですね。)

  • ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

    高校時代に読んだというアマゾンレビューもあるほどの基本中の基本な本で「宮崎 哲弥氏と呉 智英氏との仏教対談 – ニルヴァーナへの道」でも言われているようにまずこれを読むと良いと思います。彼の説法は喩えの巧さは然ることながら、訳注にも書かれているんだけどサンスクリット語で聞くと歌のように聞き心地が良いと言うから興味が尽きないところ。

  • シッダールタ (新潮文庫)

    バックパックトラベラーの友人から貸してもらって読んだ本。これは、パスツール研究所で学び父親が西洋哲学者であるマチウ・リカール氏が仏教僧侶になったという事実にも言えることなんだけど、英語とか第二母語を話すようになって日本語が正しく使えるようになるのに似ていて、西洋人の仏教理解について学ぶことが東洋の仏教理解に大いに役立つと思う。「両端を知り尽くして中道を行け」という仏教哲学そのものを具現化する一冊。

    修行を放棄して俗世にやって来た本人が、事業をしてもサイコロを転がしても上手く行くというくだりがバックギャモン愛好家としてはお気に入り。

    小説ではないんだけど同種のものとしては、zen habits というサイトの管理人が書いた「Focus」も少し道教が混じっていますが気付くことが多くて面白かったです。

  • 掌の中の無限―チベット仏教と現代科学が出会う時

    先に紹介したマチウ・リカール氏の対話本の続編なんだけど、「もし万能/全能の神が宇宙を作ったというのであれば、出来損ないの宇宙が見つからない限り、彼に宇宙を作らない自由が無いので万能/全能ではない」という趣旨の、一神教や神の万能性に対する否定論が最も印象深かった。これを読んでからは、個人的にも代理店の担当者から「hkitagoさんの作ったものは完璧です!」とか持ち上げておだてられることがあるのだけど、「ああ、そっちの人なのか」と冷めた目で見てしまったりして。日本の文化に関して言えば、元々の多神教文化もあることに加えて、これは先の宮崎さんの番組でも言われている「他力本願」だとか「無下な感謝」を広めてしまった親鸞さんの悪影響という面もあるのかと思うのだけど、モノを作って公開するというプロセスを経験したことがある人なら理解が深いと思う。(作るものを「子供」に置き換えないように!)

これだけ読むと日本人が書いたビジネス書だとか「〜する何ヶ条」みたいなハウツー本の多くは仏教哲学の二番煎じか「てにをは」を変えただけに見えて味気なさを通り越して滑稽に見えてくるので、そちらを楽しみたい方は読まない方が良いと思うので予め。

最後に、スティーブ・ジョブズ氏も今年の講演で言っていたように、ハードウェアに対するソフトウェアは人間の精神に相応することもあって、この記事が多くのソフトウェア技術者やそれを目指す人へ参考になればとても幸いです。

P.S.
紹介したあらゆる映像の中で「思いやり」とか、あるいは「慈悲」と訳される英単語「Compassion」に対する言葉が「Passion」であることはとても面白いと思ったことも留めておきます。

投稿者: hkitago

個人事業主でウェブと iOS, Android アプリの開発者で一児の父親。JavaScript, ActionScript, AppleScript, PHP, SQL, ObjC, Swift, Java の読書実行試験運用管理を生業とし、Bind, Postfix, Apache を MacOS で使い、エディタは Vi, mi, Kod, Smultron, TextWrangler を経て Coda, Xcode, Android Studio といった IDE と CotEditor を重用しています。